【M&A解説付き】日本のM&A市場の動向について
新型コロナウイルスが世界を席巻した2020年。そして2022年を迎えた現在も影響は続いています。企業にとっても生き残りを賭けた熾烈な戦いが続いていく中、今後の市場の動向が気になります。
そこで今回は、M&Aとは何かと日本のM&Aの市場動向についてお伝えいたします。
■M&Aとは?
M&A(エムアンドエー)とは、企業の合併や買収を指す用語で、広義では企業の競争力強化や新規事業の多角化等、業務提携を含めた「企業戦略」の全般を指して使われることもあります。英語では「Mergers and Acquisitions」と表記されています。
M&Aの主な手法としては、以下となります。
【合併】
・吸収合併
・新設合併 等
【買収】
・株式譲渡
・新株引受
・株式交換 等
また上記の合併・買収以外も「提携」という形でのM&Aの手法として、「業務提携」や「資本提携」もあります。
■2000年以降の日本のM&A
2000年以降、日本国内におけるM&A件数は大きく増え、とりわけ国内企業同士のM&Aは増加しました。話題をもたらしたニュースといえば、堀江氏率いるライブドアによるニッポン放送のM&A。それまでM&Aという言葉を知らなかった人まで広く知られるようになったのではないでしょうか。
そんなM&Aも、リーマンショック以降の景気低迷によって件数は減少に転じていきましたが、その後2010年代から再び増加に転じ、2021年は過去最多を更新しています。
日本企業のM&A情報や統計を公開しているレコフデータによると、2021年のM&Aの件数は前年度と比較して14.7%も増加、4280件と過去最多を記録(1)したそうです。
■国内M&A市場が拡大してきた理由
なぜ、ここまで国内のM&A件数が増加し、市場が拡大したのでしょうか。しかも以前のM&Aといえば、大企業同士の合併・吸収・提携などな主でしたが、現在の国内のM&Aは中小企業同士が増加しているといいます。いろいろな要因はありますが、その一つに日本特有の問題があります。
日本の企業の多くを占める「中小企業」、その後継者不足問題
日本国内のM&A市場が拡大した要因の一つに、中小企業の創業者が自分の跡を継いでくれる人材が見つからない問題、いわゆる「後継者不足問題」があげられます。
日本における中小企業数は、全企業数のうち99.7%を占めています(2)。これまで中小企業は私たち日本人の生活を大きく支えてきました。しかし、中小企業の経営者の高齢化が進み、事業の後継者が見つからない事態に陥る企業が年々増加しています。日本の少子化も進んでいることから、創業者による後継者探しは厳しい状況が続くことが予想されます。
【日本の中小企業の抱える問題】
・創業者の高齢化
・後継者の不在(後継者の育成、親族への事業継承の難しさ)
・日本国内の少子化
そこで、優良な事業をもつ中小企業を救う救済策としてM&Aが注目されるようになり、ここ数年でM&A市場の活性化・拡大が起きるようになっています。
中小企業を支援するM&Aアドバイザリー会社、事業引継ぎ支援センター
M&Aの手法が大企業から中小企業の経営者に知られるようになっただけではなく、それを積極的に推進するための支援の充実化も見逃せません。
現在、日本には中小企業の特別な事情を踏まえ、M&Aをスムーズに行うためのサポートを行うアドバイザリー会社や仲介会社などがあります。
また、47都道府県に設置されている事業継承・引継ぎ支援センター(3)の支援なども充実してきていることも、中小企業のM&A件数増加の追い風になっています。
【民間の支援サービス】
・M&Aアドバイザリー会社
・M&A仲介会社
【国の支援サービス】
・事業継承・引継ぎ支援センター
■2022年のM&Aの市場動向は?
それでは、2022年以降のM&A市場はどうなるのでしょうか。件数では2021年に引き続き、好調な状況が続くのではないかと見られています。その主な理由は3つあります。
1.中小企業の「後継者問題」解決策としてのM&A
これまで育ててきた事業を引き続き承継してもらう相手先を見つけることで、企業の存続と成長の可能性を見込むためのM&A件数の増加が予想されます。
2.「不採算事業をどうするか」解決策としてのM&A
新型コロナウイルスの影響によって業績が悪化し、倒産件数が増えています。企業として存続するための努力をする中、不採算事業の整理が求められています。
限られた経営資源を守り企業を存続させていくための解決策として、不採算事業部門を整理するためのM&A件数が今後増えることが予想されます。
3.「業界再編」の解決策としてのM&A
これまで日本の経済を支える多くの企業では、仕入れ・加工・販売とそれぞれの業務が分かれていました。しかし、今後は少子化による労働力不足の解決策として、より業務の効率化が求められます。また、分かれていることによる余計な設備投資のコストを削減することもすでに始まっています。それぞれの役割を担う事業が集約され、資源を有効に活用するための解決策としてのM&A件数が今後も増えていくことが予想されます。
■まとめ
従来のM&Aのような大型案件は減少する可能性がある一方、日本の多くを占める中小企業同士によるM&Aが今後も増えていく流れとなっています。
少子高齢化を進む日本社会において、企業がどのように存続し、成長をし続けていくのか、2022年の市場動向にも注目が集まるでしょう。
<参考サイト>
(1)株式会社レコフ「2021年のM&A回顧(2021年1-12月の日本企業のM&A動向)
(2)独立行政法人 中小企業基盤整備機構「日本を支える中小企業」
(3)事業継承・引継ぎ支援センター