ジョブ型雇用とは?メリットや日本企業の導入事例2選をご紹介!
欧米で主に採用されているジョブ型雇用とは、どのようなものでしょうか。
ジョブ型雇用とは、企業が定義した職務内容にもとづいて人材を雇用する制度です。高度な専門スキルをもつ人材の不足やテレワーク、週休3日制などの新たな働き方の増加により、今後日本で普及すると考えられています。
今回は、ジョブ型雇用の特徴やメリット、デメリットを解説し、メンバーシップ型と異なる点や日本企業の導入事例をご紹介します。ジョブ型雇用を理解して、今後のキャリアプランに活かしましょう。
日本で認知されつつあるジョブ型雇用とは?
├ 日本で多く採用されているメンバーシップ型との違いとは?
├ ジョブ型雇用のメリット
└ ジョブ型雇用のデメリット
転職市場にも影響を与えるジョブ型雇用の導入事例
├ 株式会社日立製作所
└ 株式会社三菱ケミカル
ジョブ型雇用により働き方が変化する
日本で認知されつつあるジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用とは、職務記述書(ジョブディスクリプション)を明確にする雇用制度です。職務記述書とは、業務内容や必要スキル、勤務時間、場所などを定めた文書を指し、雇用契約を結んだ社員は記載された範囲内で働きます。
株 式会社リクルートが2020年12月3日に公開した「『ジョブ型雇用』に関する人事担当者対象調査 2020」によると、ジョブ型雇用の認知率は54.2%でした。導入率は全体の12.3%となっており、認知率は半数以上ですが、実施率はまだ少ないといえるでしょう。
ジョブ型雇用が話題になっている背景として、以下の点が挙げられます。
- 多様な 雇用形態の増加
- 高い専門スキルをもつ人材の不足
- 終身雇用の崩壊
まずは、雇用形態の多様化です。昨今では、テレワークや時短勤務、フレックス制度、業務委託契約など、さまざまな働き方が広がっています。勤務時間や場所を明確に決めるジョブ型雇用なら、多様な雇用形態に対応できるため注目されています。
また、高い専門性をもつ人材の不足も背景として挙げられるでしょう。ジョブ型雇用では、あらかじめ職務内容を明示して採用するため、高いスキルをもった人材の獲得につながります。
終身雇用の崩壊も理由の1つです。これまで多くの日本企業では終身雇用が前提でしたが、昨今では定年まで雇えない企業も増えています。そのため、新卒採用で長期育成を図るのではなく、即戦力として人材を獲得できるジョブ型雇用に期待が寄せられています。
日本で多く採用されているメンバーシップ型との違いとは?
日本では従来、メンバーシップ型と呼ばれる雇用が一般的でした。メンバーシップ型とは、職務内容や労働時間、勤務地を限定せずに雇用契約を結ぶ仕組みです。基本的に、長期育成を前提とした新卒一括採用がメインとなります。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の最大の違いは、職務内容が明確かどうかです。そのほか、以下3点の違いがあります。
- 基本的に異動が発生しない
- 実績重視で評価される
- 会社での教育が少ない
ジョブ型雇用では、基本的に異動はありません。なぜならメンバーシップ型と異なり、雇用契約で勤務場所が明確に定められているからです。
また、ジョブ型雇用では実績を重視して評価が行われます。メンバーシップ型では勤続年数や年齢が重視されますが、ジョブ型雇用では職務や役割に対する評価になるため、仕事での成果が待遇に直結します。
そして、教育面の違いもあります。メンバーシップ型では、新卒採用の際にビジネスマナーや社会人の基礎から教育します。しかしジョブ型雇用では、求めている能力をもった人材を採用するため、手厚い教育は行いません。そのため、自身で勉強しスキルを獲得する姿勢が求められるでしょう。
ジョブ型雇用のメリット
ジョブ型雇用のメリットは、主に3点挙げられます。
- 専門スキルを活かせる
- 報酬の明確化
- 入社後のミスマッチが起こりにくい
まずは、専門スキルを活かせる点です。採用時に業務範囲が明確に示されているため、営業やエンジニアなど自身の経験を活かした仕事に就けます。契約外の仕事をしないため、さらなる専門性を身につけられる点もメリットです。
また、報酬が明確であるメリットも挙げられます。ジョブ型雇用では、職務や役割に対して報酬が発生するため、仕事量が多くより難易度の高い仕事をすると報酬が上がります。仕事に対して支払われる報酬がわかりやすいといえるでしょう。
そして、入社後のミスマッチが起こりにくい点もメリットです。職種や労働条件、労働時間、場所などがあらかじめ職務記述書に明記されるため、入社後に「思っていた仕事内容と違う」というトラブルを避けられます。
ジョブ型雇用のデメリット
ジョブ型雇用のデメリットは、以下の3点が挙げられます。
- 失業リスク
- 実績がないと採用されにくい
- 契約範囲外の仕事ができない
ジョブ型雇用は、社員にとって失業のリスクがあります。職務にもとづいた採用のため、企業内で業務が必要なくなった際には解雇もありえます。
またジョブ型雇用では、今までの実績がないと採用されにくい点もデメリットの1つです。企業は、必要なスキルや経験をもった即戦力の人材を求めています。実績がなければ、ジョブ型雇用を採用している企業への入社は難しいでしょう。
加えてジョブ型雇用では、基本的に契約範囲外の仕事を行いません。その理由は、業務内容が職務経歴書に定められているためです。例えばプログラマーとして入社した場合、エンジニアとしての仕事に挑戦できない可能性があります。
転職市場にも影響を与えるジョブ型雇用の導入事例
ジョブ型雇用の需要は高まっているため、これからの転職市場にも影響を与えるでしょう。しかし日本では、大学卒業後に専門スキルの獲得が難しく、失業リスクもあるため導入には慎重な検討が必要です。
そのため、欧米のようなジョブ型雇用ではなく、社員の専門スキルを高める環境を作る企業が多くなっています。
ここでは、2社の導入事例をご紹介します。
株式会社日立製作所
株式会社日立製作所では、2021年4月から管理職を対象にジョブ型雇用を導入する方針を打ち出しました。2022年7月には一般職員も対象にしています。
日立製作所がジョブ型雇用を採用している理由は、事業のグローバル化のためです。そのため、採用をグローバル人事部門と地域別人事部門に分け、グローバル対応ができる人材の確保を目指しています。
また採用時には、営業や経理、人事など配属先を確約する制度の導入や通年採用も行っています。企業の都合で人材を配置せず、通年採用によりさまざまな経験を積んでから就職できるため、自らキャリアを描きやすい環境といえるでしょう。
そして「日立アカデミー」と呼ばれるプログラムから、数千講座を受講可能です。日立製作所には、ジョブ型雇用に求められる専門性を自分自身で高められる環境があるといえます。
株式会社 三菱ケミカル
株式会社三菱ケミカルは、管理職と一般社員を対象にジョブ型雇用を取り入れています。三菱ケミカルがジョブ型雇用を取り入れた理由は、社員の自主性を高め、年功序列制度から職務で評価する体制に変革するためです。
三菱ケミカルには、事前に定義した職務への成果で報酬を決める仕組みがあります。以前は勤続年数や経験を評価基準として重視していましたが、ジョブ型雇用の導入により年功序列をなくしています。
ほかにも三菱ケミカルでは、家族と暮らしている地域から単身赴任先の仕事ができる制度があります。多様な働き方を取り入れることで、育児や介護でキャリアを諦めることなく、自身の専門スキルを磨くことが可能です。
加えて三菱ケミカルでは、異動や転勤を社内公募制にする仕組みも取り入れています。各部署が必要な人材を公募し、応募した社員の選考を経て配属が決まる制度です。
このように三菱ケミカルでは、社員が自ら専門的なキャリアを選択できるよう、ジョブ型雇用を活用しています。
ジョブ型雇用により働き方が変化する
ジョブ型雇用とは、職務範囲を明確にして雇用を行う仕組みです。働き方の多様化や終身雇用の崩壊などにより、現在注目度が高まっています。
ジョブ型雇用では、専門的なスキルや経験を活かして仕事ができ、報酬や働く場所などが明確になるメリットがあります。しかし、実績がないと採用されにくく、失業リスクがあるデメリットもあるため、慎重な導入が必要です。
本記事で紹介したジョブ型雇用の特徴やメリット、企業の事例を押さえ、自身のスキルが今後どう活かせるのか把握しておきましょう。