【2021年版】トップの役員報酬は18億円!日本の上場企業の役員報酬まとめ

日本経済を牽引する上場企業は、現在3800社あまり存在しています(1)。そんな上場企業のトップを務める役員は、どれくらいの報酬を得ているのでしょうか。やはり気になる方も多いことでしょう。

日本の経済や企業トレンドを発信する民間調査機関「東京商工リサーチ」は、2021年3月期決算を迎えた日本の上場企業の役員報酬の調査の最終結果を発表(2)しています。 それによると、1億円以上の役員報酬を個別開示した企業は253社、544人であることがわかりました。さっそく詳しく見ていきたいと思います。

■役員報酬最高額は「ソフトバンクグループ」の18億円

2021年役員報酬額10億円超えは「5人」

日本での役員報酬最高額を手にしているのは、ソフトバンクグループのサイモン・シガース取締役、その金額は驚愕の18億8200万円でした。

日本人の生涯賃金が男性平均約2.92億円、女性平均約2.44億円(※大学卒の場合の試算)であることから見ても、サイモン氏は優に6~7倍もの額をわずか1年で稼いでいるようです(3)。続いてトップランキング10位までを見てみると、上位5位までが10億円超えであることがわかります。

(引用:東京商工リサーチ

さらにトップ10位までを見ると、10人中7人外国人で占められ、上位4位までが外国人、ようやく5位に日本人がランクインする流れとなっています。

上場企業はプロフェッショナル経営者を経営陣に

報酬額トップのサイモン氏は、イギリスARMホールディング社の元CEO(2016年にソフトバンクグループに買収)で、国際的なプロフェッショナル経営者で知られています。

次いで第2位武田薬品工業のクリストフ・ウェバー氏もまた、イギリスの多国籍製薬会社グラクソ・スミスクラインバイオロジカルズ社のCEOだった人物です。

第3位のマルセロ・クラウレ氏は、アメリカ携帯電話事業のスプリント社の元CEO(2013年にソフトバンクグループに買収)で、2018年にソフトバンクグループのCOOに就任しています。(2022年1月に退任を発表)

第4位のディディエ・ルロワ氏は、フランスのルノー社(当時はカルロス・ゴーン氏の下で働いていたという経歴の持ち主)からヘッドハンティングでトヨタ自動車に移り、2015年には外国人で初めてトヨタ自動車の取締役副社長に就任しています。創業家出身の社長である豊田章男氏よりも高額報酬をもらっていることがニュースになったのは記憶に新しい方もいることでしょう。

このように、日本の上場企業ではグローバル世界の中で戦えるような“プロフェッショナルな経営者”を経営陣に積極的に迎えた結果として、必然的に役員報酬も高騰する傾向となっているようです。

第5位が日本人の吉田氏、ソニーグループ会長兼CEO

第1位から4位までは外国人で占められましたが、日本人で唯一10億円を超えた役員報酬を得たのはソニーグループの吉田憲一郎氏で、第5位の12億5300万円でした。

吉田氏は、技術系・理工系重視が社風であるソニーの中でも財務・管理分野を歩み続け、2018年に副社長から社長に昇格した異色の経歴で知られています。

■企業別役員報酬開示人数ランキング・トップは「日立製作所」

次は、企業別で1億円以上の役員報酬を得ている人数が多い上場企業ランキングを見ていきたいと思います。

2021年の役員報酬を開示した253社の中で開示人数が多い順に、日立製作所(15人)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(11人)、三井物産(9人)、大和証券グループ(9人)、東京エレクトロン(8人)、ソフトバンクグループ(8人)となっています。

どの企業もグルーバル展開する企業であり、業種として「電気機器メーカー」「金融」「商社」「情報・通信」など、上位にランキングされるのが頷ける分野となっています。

(引用:東京商工リサーチ

■役員報酬とその企業に勤める従業員の平均給与との差は?

冒頭では、1位のサイモン・シガース氏の役員報酬と日本人(大卒)生涯賃金との差についてご紹介しましたが、次はさきほどのランキングでご紹介した企業とそこに勤める従業員との給与の格差についても触れておきたいと思います。

2021年の役員報酬1億円以上を得ている544人の基本報酬および賞与の合計金額と、従業員の平均給与を比較したデータによると、格差がもっとも大きいのはソフトバンクグループ社となっています。

サイモン・シガース氏の役員報酬と従業員の平均給与には約83倍の差があり、役員報酬と同じくこちらもトップ水準となっています。ソフトバンクグループの従業員の平均給与も1400万円とサラリーマンとしては高額となっているにもかかわらず、サイモン氏の役員報酬が高額なために格差が大きく開いた結果となりました。

2位はトヨタ自動車で、ディディエ・ルロワ氏の役員報酬と従業員の平均給与の差は約82倍、3位の日本管財の福田慎太郎会長の役員報酬と従業員の平均給与の差は約69倍、4位

~5位までの役員報酬と従業員の平均給与の差は約60倍と、いずれもかなり大きな差となっていることがわかっています。

ちなみに国税庁のホームページによると、日本の平均給与は467万円(4)となっているため、仮に上記の企業に勤める従業員と役員報酬を比較すると、さらに格差は大きくなっていくでしょう。

(引用:東京商工リサーチ

■2021年の役員報酬額から見えること

役員の報酬体系にも広がり

昨年度の役員報酬額10億円超えは5人であったことは上述した通りですが、2020年と比較するとマイナス3人だったようです。

さらに、20億円を超える報酬は9年ぶりにゼロとなったことからも、世界的なコロナ禍による企業業績の悪化の影響がうかがえる結果となっています。

とはいえ、開示された403人うち役員報酬額が増加した人は219人(構成比54.3%)と半数以上を占めていることから、ストックオプションや株式報酬などといった非金銭報酬での支払いが目立つようになり、日本でも業績連動型の報酬体系の広がりが見られます。

日本の上場企業の上位200位強が2億円超

最後は視点を変えて、2億円以上の役員報酬を得た人がどれくらいいたかを見てみたいと思います。

役員四季報によると、報酬額ランキング1位から500位までが掲載され、それを見ると213位以降から2億円を切り、500位まで続いていきます。

つまり、上位212人は2億円を超える役員報酬を得ているということになり、日本における上場企業の役員報酬額2億円を超えるラインは、上位200位強と見ることができます。

まとめ

いかがでしたか?日本の上場企業の役員の報酬額に驚く方も多かったのではないでしょうか。一方、2億円を切る(=1億円台~1億円以下)報酬の役員の方が多い日本も、海外から見ればまだまだ格差は小さい方だと言えるようです。

私たちももっとがんばっていきたいものですね。

<参考サイト>

(1)日本取引所グループ「上場会社数・上場株式数」

上場会社数・上場株式数 | 日本取引所グループ

日本取引所グループは、東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所等を運営する取引所グループです。

(2)東京商工リサーチ「2021年3月期決算「役員報酬1億円以上開示企業」調査【最終】」

TSRデータインサイト | 東京商工リサーチ

東京商工リサーチが長年蓄積してきた企業情報、倒産情報および公開情報等に基づき、独自の視点に立った分析をレポートにまとめて発表しています。

(3)北陸銀行「生涯年収の平均はどれくらい?将来への備えはどれくらい必要なの?」

(4)国税庁「平均給与」